しげちゃん一座
こんにちは☀
春に乳がんが見つかり、ただいま絶賛治療中のスマイリーです☺
9月末には、5回目の抗がん剤をしてきました。
全8回の治療も後半戦に入り、前は1週間から10日で抜けていた副作用が、今回は投与後の回復までに2週間と、前より少し時間がかかっているかな、という印象もありますが、あと3回なので何とか乗り越えたいと思います。
さて、そんなことで、だいぶ前の話になりますが、前回の抗がん剤の直前に、お友だちに誘われて隣町のメロディ・ホールまで、『しげちゃん一座』という舞台を見に行ってきました☺
良いお席がとれたのでご一緒しませんか、という嬉しいお誘いだったのですが、そもそも『しげちゃん一座』というのに心あたりがなく、なんだろうと調べてみると、なんと室井滋さんのトークショーだとか。
『しげちゃん一座』のしげちゃん、というのは、どうやら室井滋[ムロイ- シゲル]さんのことらしいのです。
声が独特で、いつも明るくパワフルな室井滋さん。面白そう、と思ったのは、他にも理由がありました。
『しげちゃん一座』のメンバーに、あの『いいから いいから』の絵本作家の、長谷川義文さんの名前があったのです。
絵本好きの私としては、これでもう、テンションMAXになりました。
長谷川義文さんといえば、なんとも力の抜けた絵とお話で、けれど何か現代人が忘れている余裕とか、楽しむ心とかを描いてくれて、読むと心がほっこり、子どもたちも大好きな絵本がたくさんあるのです。
先にあげた『いいから いいから』なんかでは、貧乏神にとりつかれた一家が、お母さんがお財布をなくして晩ご飯のおかずが買えなかった位は序の口で、最後にはお父さんの会社が倒産してしまうのですが、そのお父さんにおじいちゃんがかける言葉が、「いいから いいから、せっかく無職になったんじゃ、しばらくゆっくりしたらいい」という、なんとも悠よう迫らざる感じが、お金や仕事にあくせくしてしまいがちな現代の大人にも、何かを語っているように思えます。
さて、そんな『しげちゃん一座』ですが、その長谷川義文さんと室井滋さんの他、ピアノとサックス担当のお洒落な二人を加えた四人組の出演で、皆さんこちらへは、前日に来たとか。
正面にはスクリーンがはられ、左手にグランドピアノ、その他に3つの席が用意された舞台に、延々と「パンチ・パーマ」「パンチ・パーマ」「パンチ・パーマ」「パンチパーマ」…と繰り返す独特な音楽にのって、四人は現れました。
白いシャツにカラフルなチェックの蝶ネクタイというスタイルは全員お揃いですが、室井滋さんだけは、更に赤いチェックの上着に赤いベレー帽という昔のチェッカーズのような出で立ちが、明るく可愛かったです。
その室井滋さん。
のっけから、高砂温泉(地元では誰でも知ってる有名な温泉ですが、旬は過ぎててナゼ?ソコ?感がある)旅館に泊まったけど朝風呂のお湯がぬるかった、なんていう話で会場の笑いをとって、舞台はスタートしました。
歌あり、踊りあり、そしてなぜか日本手拭いでの見立て遊びあり。
「皆さんにもやってもらいますよ~!子どもさん3人と大人の方も3人ね!」なんて言われると、ドキッとしてしまいますが、会場から参加者を募って舞台に上がってもらうのは、一体感が出て、流石な手法だなと思いました。
ピアノとサックスの演奏も素晴らしく、この二人のコーナーは、まるでライブに来たかのような完成度でした。
たぶんこの二人だけでも、素敵なジャズ・コンサートが開催できるんだろうなと思わせる腕前で、その音楽を生で聴けるという貴重で贅沢な時間でした。
もちろん、長谷川さん本人による絵本の読み聞かせもあり、長谷川さんの絵本はこれまでずいぶん読んできたつもりの私も知らなかった作品もありました。
後ろのスクリーンに絵本の画面を写し、めくりながら読む長谷川さんの読み聞かせは、淡々とした中にもユーモアがあり、声といい、間といい、のんびりと優しい長谷川さんのお人柄の伝わる、何ともほっこりする時間でした。
そして、今回は絵本『しげちゃん』の発売記念とあって、そのお話の披露がメインでしたが、この本だけは、いわゆる読み聞かせという形ではなく、これを書いた原作者の室井滋さんが本人役で語りとセリフを演じるというスペシャルな企画でした。
あの声で、自分の書いた台詞を読むのですから、スクリーンの絵を見ながらも、声優さんが感情を入れて台詞を読んだり、俳優さんが声だけで演じているような臨場感がありました。
『しげちゃん』文:室井滋、絵:長谷川義文
男の子みたいな名前が嫌で、お母さんに名前かえてよ、とまでお願いしたしげちゃんが、どんな風にこの名前を自分の名前として受け入れていったか…お母さんの思いも伝わる、とっても素敵なお話です。
絵本の中には書かれていませんが、読み聞かせの後で、室井滋さんが言っていました。
「女優さんになったら、芸名をつけるのが普通なんだけど、こんな風に自分の名前とつきあってきて、もう他の名前にかえられない。」
だからずーっと室井滋だと。
この素敵な名前をつけてくれた両親に感謝していると。
そして、今回こんな形で絵本にすることができて、本当に嬉しいと。
‘’両親はもう亡くなってしまっているけれど、たぶん今日もこの辺にいて聞いていて、喜んでくれているはずです‘’という下りでは、ちょっと泣いてしまったスマイリーです。
私も、死んでしまった人は、きっと近くで見守ってくれているはず派、だからです。
室井滋さんは会場の一人ひとりに続けます。
子どもに向けては、今日おうちに帰ったら、自分の名前がどういう意味か、お父さんお母さんに聞いてみてね、と。
大人には、子どもさんの名前の由来を、教えて上げてほしいと。
今日、ここに集まったそれぞれのお宅で、夜、夕飯を囲みながら、どれだけのご家庭が、この名前にまつわる話でしあわせに包まれるんだろう、と思うと、絵本の力、良いお話の持つ力、そしてそれを形にして伝えてくれる人間力の強さ、暖かさに、またまた涙が出てしまいました。
トークショーの魅力というのは、こうやって色々な本音や裏話を聞いて、その人の人柄に触れることができるという所かもしれません。
室井滋さん、大好きになっちゃいました。
これからも、応援していこうと思います。
そして、この『しげちゃん一座』の絵本ライブショー、とってもおすすめです!
入場する前のわずかな時間に、入り口の販売コーナーでその、『しげちゃん』の絵本を買ってありました。
誘ってもらったお礼のつもりで、自分の分と2冊求めて、プレゼントさせてもらいました。
今日のトークショーが、この絵本の出版記念だということが会場の大判ポスターに書かれていたのを読んで、慌てて買ったのですが、これが大ファイン・プレーでした。
終了後のロビーは瞬く間にサイン会場となり、本を買ってサインをもらおうとする人でごった返す中、早々とサイン会の列に並ぶことができたのです。
と言っても、今回誘ってくれたお友だちが、私が並ぶから座ってて、と言って絵本を2冊抱えて並んでくれたのですが。
自分ではそこまで疲れているという自覚はありませんでしたが、ロビーの窓際の椅子に腰を下ろすと、やはりほっとする自分がいました。
もうどこまで行ったかな、早く並んだからそろそろかな、と思って見ると、その友達が一生懸命手をふって呼んでいます。
慌てて立って近づくと、そこに入るように言うのです。サインは目前でした。
2冊ともサインして貰ってくれればとお任せするつもりでいたのですが、せっかく良いタイミングで呼んでくれたので、横入りになっちゃうと思いながらも、そこに入れてもらいました。
「ごめんね~」と真後ろの子どもさんには挨拶だけしたのですが、何だかわかってくれているような気がしました。
がん患者だからって、ちょっと甘えていますね。
絵本には、おかっぱ頭の似顔絵に、いくみちゃんへ、と長谷川さんのサインをもらい、「長谷川さんの絵本の大ファンです。授業でもいつも読んでます!」と伝えることができました。
室井滋さんには、元気もらいました!と言って、握手してもらうことがができました。
サックスとピアノのお兄さんも、素晴らしい演奏でした!と言うと、握手をしてくれました。
『しげちゃん一座』の四人は写真撮影にも応じており、友人が撮るのに入らせてもらった写真だけは、後で送られてきたのを見ると、目が腫れており、あ~やめておけば良かったかな、と思いましたが、サイン会の方は、割り込ませてもらって良かったです。
一冊一冊に四人がサインし、できたらそこで写真を撮ってと、丁寧に対応してくれている分時間もかかり、まだまだ長く続くサイン会の列を後に二人で会場を離れ、せっかくだからと近くでお食事をしてきました。
お盆にも寄った大好きなお店でちゃんこ出汁で美味しいきしめんをいただきましたが、話に花が咲いて、この日ばかりは食事に来たとは思ってもらえなかったかもしれません。
長い闘病、仕事も休ませてもらっている中ではありますが、抗がん剤直前、心にも体にも栄養になった、『しげちゃん一座』の午後でした。